【スイングしたら】文 小池玄一郎
猫ってなでるとゴロゴロいって、なんか遠くでカミナリが鳴ってるみたいだ。
シャワーからの雨粒に打たれて、わたしは、雷に打たれるイメージに……ふるえる。
怖がる素振りだけが上手くなる。本当に怖かったら、きっと何にもできないだろう。
彼はいつも素振りをする。
会社で嫌なことがあったりすると、木製のバットを力強く握り、スイング。
ビュッと風を切る音。
無駄のない、しなやかな動き。
汗をかいて、一心不乱に打ち込む彼の横顔は正直嫌いじゃない。
だけど、もし彼がわたしに向けてそれを振るってきたら……カチャ「ひっ」勝手に開いたドアの音に、
わたしは自分でもびっくりするくらい驚いている。たった今、顔に貼り付いた恐怖は、たぶん本物だ。
やればできんじゃん、わたし。