【オ・ラーイ】文 小池玄一郎
目の前には、畑。
耕されたばかりの土は、黒々としていて柔らかそうだ。
畑の隅に彩りを添えるタンポポ。草むしりの前に咲いとけー!
飛ばせ綿毛、つなげ命。楽しげだ。
近郊農地の周辺には、ぽつぽつとマンションが点在していて、
その向こうに空間の奥行きを感じさせる、送電線の鉄塔たち。
つなぐライン。黒く浮かび上がらせる空の色は、ちょい灰色がかった淡い水色で
俺はこの色が大好きになる。
こんな空に、たかーく上がったフライを取りたい。野球なんてしたことないけど。
センターバック!走れ走れ、ボールを背に。オラーイ。
両手を上げて、しっかり捕球。スパン!
グラブごしに伝わる小気味良く乾いた音を想像していたら
シュッと視界をよぎる影…その正体はツバメ。
もうそんな時期か、と毎年思っているような気がして我ながら芸が無い。
白い胸を、
空にツイイーとすべらせて。
つなげ命、つなぐライン。