【柿の種】
文 小池玄一郎
長い雨のあとで
熟れ落ちた
柿の果実が地面を覆い
辺りには
青臭いような腐臭が漂っている
うっすらとした甘味を含んで
ぐずぐずに崩れ堕ちた果肉の匂いに誘われた蠅たちが
秋の陽だまりにプンプン羽音を立てながら元気に
もうじき死に絶える
蒔かれた種は焦りだす
芽を出すことなく
根を張ることなく
このまま
親の根元で腐り果ててしまうのか
生温かい
木漏れ陽の中で
誰でもいい
ここから連れ出してくれよ
猿でも
カニでも
何でもいい
天の神様の言う通り
おすすのす 柿の種